ナイチンゲールの体と心の捉え方

ナイチンゲールは、患者にとって変化のある生活環境を与えることは、「病気の回復の重要な一つの手段である」と述べています。看護にあたって、病人の体が心に及ぼす影響に細やかな心配りを促しているのです。このように、人間を体と心の一体化したトータルに捉える見方も本来的にエコロジーの視点に立つもので、体を物質の集まりであり一つの機械と見立てるような支配的な科学観の中からは、生まれてこない発想なのです。そのような化学観は、根強く受けつがれているものです。日本では周知のように、老人病棟の医療のあり方が告発されています。たとえば、認知症の高齢者に「寝たきり」化を推し進め、夜ともなればベッドにくくりつけるといった状況さえ生じていることを考えると、ナイチンゲールは100年後さえ見透かしていたようです。入院患者が病室の「生命のない壁面だけを凝視させられる」心の苦痛をやわらげる手だてとして、誰もが心のうちに持つ「自然への欲求」を満たせるよう行うことが、いかに生きる力を病人に与えるかを彼女は分かっていました。陽光が射してくれるだけでもいかに患者の神経を和ませるかということ、患者に必要なのは「自然」が与えてくれる感銘なのだということをです。いずれにしても、病人は体だけではなく、体に発した心も病んでいるのであり、単調さを打ち破る変化や色彩・陽光の明るさ・食事など、それを与えることは病気の回復への一つの手段なのです。

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